どうも、ひげづら(@higedura24)です。
株式投資におけるリスクには「保有銘柄の倒産リスク」があります。
もし保有銘柄が倒産した場合は大きく損失を被ることになりやすく、特に長期保有する際には気をつけなければならないリスクと言えるでしょう。
企業の倒産リスクを測る為には財務体質を考えることが手っ取り早く、そのひとつの指標として用いられるのが「利益剰余金」です。
色々な企業に対して利益剰余金額を調べると企業内部にたんまりとお金を貯め込んでいるケースもあれば、マイナスとなっているケースもあります。
この記事では利益剰余金がマイナスになる理由や実例を述べ、そこから考えられる教訓を考えました。
なるべく倒産リスクを避けて投資をしたい方はぜひご参考下さい。
利益剰余金とは
利益剰余金とは貸借対照表における「純資産」のうち、資本金・資本剰余金・自己株式を抜いたお金を言います。
利益剰余金の内訳は
- 利益準備金:会社法の規定によって積立が義務づけられている準備金で、配当によって減少する額の10分の1を資本金の4分の1の額になるまで計上
- 任意積立金:会社側が修繕や配当など特定の目的で任意に積み立てるお金
- 繰越利益剰余金:使途が決まっていない内部留保的なお金で、使用の際は株主総会や取締役会にて決議される
の3つに大別されていますが、主には繰越利益剰余金としての意味合いが投資家から注目されているでしょう。
参照リンク:マネーフォワード|利益剰余金とは
利益剰余金の主な目的は
- 会社の安定運営:設備投資や修繕費用など
- 持続的な成長のための資金:新規事業の初期費用や既存事業の拡大など
- 株主還元策の維持:配当金や自己株式の取得など
であり、その源泉は事業利益です。
したがって利益剰余金が
- 増加傾向:事業利益が安定的に出ている
- 減少傾向:事業利益があまり出ていない
と考えられますが、中小企業の場合は事業利益を積極的に投資していることも考えられるので時価総額や上場年数にもよるでしょう。
利益剰余金の目的を考えると、内部留保ばかりが膨らんで事業拡大もしなければ株主還元もしないような会社は余り魅力的ではありません。
利益剰余金の目的も果たして、なおかつ安定して内部留保が増えていくような会社が投資先としては好ましいですね。
ちなみに、利益剰余金の大きさはどの業種に属しているかにも影響されやすいため、有利子負債額と合わせてセクター内の基準で考えた方が良いと思います。
例えば
- 同業他社で比較してみる
- セクター内の同じ時価総額帯で比較してみる
など似たような状況に置かれている会社同士で比較すると稼ぐ力の差もわかりやすいです。
利益剰余金がマイナスになる理由
利益剰余金は事業利益から積み立てられていくものですが、四季報に掲載されている企業の中にはマイナス表記のものもあります。
利益剰余金は事業利益を繰り越していくものですので、よくよく考えると「繰り越せていないだけであればゼロが正しい表記では?」と感じますよね。
利益剰余金がマイナスになってしまう流れはどのようなものでしょうか。
最初の流れとして考えられるのは「継続的な赤字運営」です。
というのも、利益剰余金の計算式は
- 利益剰余金 = 累積利益 + 当期経常利益
なので、継続的な赤字運営で累積利益が減った場合には利益剰余金は底尽きてしまいます。
また、利益剰余金が底尽きた状態でも株主に対する義務や信頼関係を保っていくために「配当支払い」などはしなければなりません。
そのために行われるのが「資本金からの補填」ですが、それが続くと債務超過(純資産の合計がマイナス)になる可能性もあります。
赤字運営が継続的に行われると上記の流れで資本金が減少しますが、税金計算の関係で帳簿上の資本金額を変更することは難しいです。
そこでその他の勘定項目を活用して資本金の減少を表さねばならず、その為に活用されるのが利益剰余金になります。
具体的には利益剰余金をマイナス表記することで資本金の減少を表していて、これが「繰越金であるはずの利益剰余金がマイナスとなる理由」です。
利益剰余金がマイナスとなった事例と教訓
利益剰余金がマイナスとなるのは赤字運営が継続的に行われた会社ですが、実例としてはどのような会社でしょうか。
ここではレナウンを例に挙げてみたいと思います。
レナウンは1902年に創業されたアパレル大手で、有名百貨店や商業施設にも店を構える東証一部上場企業です。
かつては業界トップの立ち位置で、カラフルな傘マークがワンポイントで施されたポロシャツをイメージできる方も多いと思います。
1980年頃には最高売上高2000億円を突破しましたが、そこからは鳴かず飛ばずの推移です。
2013年には中国企業である山東如意の子会社となりましたが、売上高は減少傾向でした。
そんなレナウンにおける直近の利益剰余金額は
このようにマイナスとなっていて、ここからも累積利益や直近業績の低迷が想像できます。
気になる直近業績は
- 売上高が連続的に減少
- 営業利益・経常利益がマイナスの年あり
- 2019年度は大幅なマイナス(前年同期比マイナス1948.8%)
となっていて、利益剰余金がプラスに転じる様子はありません。
そんな状況の中で2019年12月に新型コロナウィルスが流行し始め、2020年4月には国内に緊急事態宣言が出されました。
この流れで百貨店や商業施設が相次いで営業自粛を行い、レナウンの売上高も激減。
資金繰りが苦しくなり2020年5月には民事再生法の適用申請という結末に至っています。
自分が子供の頃から知っているブランドがこんな状況になるとは驚きですが、ここから考えられる教訓としては
- 利益剰余金がマイナスになるほどの赤字運営となっている企業には触らない
- 売上高の増加や利益率は事業存続において重要
ということでしょう。
また、レナウンにおける直近の自己資本比率は47.4%でしたが民事再生法の申請に至っています。
自己資本比率は50%以上で倒産確率が低い優良企業なんて言われますが、やはり倒産リスクは総合的に見るべきです。
売上高がなければ財務的な体力は減っていくでしょうし、稼ぐ力があっても内部にある程度蓄えていかなければ万が一の時に倒産してしまいます。
利益剰余金がマイナスとなる事例から得た教訓を忘れない様に銘柄選定していきたいですね。
まとめ
いかがでしたか?今回は利益剰余金がマイナスとなる理由や、そこからわかる教訓について述べました。
利益剰余金は事業利益から繰り越されていくもので、赤字運営が継続された場合は底尽きてしまうでしょう。
利益剰余金が無い状態で配当金などを捻出するためには資本金から移動しなければならず、帳簿上は資本金の減少を利益剰余金のマイナス表記で示します。
レナウンのように業績不振に陥った場合は利益剰余金がマイナスになりやすく、そもそもそういった株には触らない方が良いですね。
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