株の世界には出来高と売買代金というものがあります。これらは需給面を考える上でとても大切なものですが、時に同じものとして扱われがちでもあります。結論的には全くの別物という解釈が正しくて、この記事では
- 出来高と売買代金の違い
- 売買代金が表すもの
- 売買代金ランキングの活用
- 時価総額規模で区切った場合の解釈
- 指数や市場の売買代金
などについて述べました。一般的な知識から私見までありますが何かしらの参考になれば幸いです。
売買代金と出来高の違いとは
まず売買代金と出来高がそれぞれの銘柄でどのように表示されているか見てみましょう。
上記は株探というサイトからトヨタ自動車の基本情報を抜粋した画面ですが、これを見ると出来高と売買代金は分けて表示されています。もし売買代金と出来高に違いがなく、同じ意味合いを持っているのであればこのように別表示するのは違和感がありますよね。
売買代金はお使いの証券会社アプリでも個別銘柄ごと出来高と別表示されているのが一般的ですし、どの媒体でもほぼそれが主流でしょう。また、見てわかるように
- 出来高:単位が株数
- 売買代金:単位が円
となっています。こういった時点で両者は全くの別物だとわかりますが、よりわかりやすくするために計算式で表してみるとこうなります。
- 売買代金(円)=株価 × 出来高
計算式の意味としては「1株いくらの銘柄が何株売買されか」というものですね。つまり数学的な解釈としては「出来高は売買代金を構成する要素のひとつ」ということになります。
キーマンは株価
計算式に直してあげると一発で別物だとわかりますが、おそらくこの記事を読んでいる方が知りたいのはそんなことではないですよね。知りたいのは「出来高と売買代金に違いがあるのならそれぞれどういう意味合いなのか」という点でしょう。ということで次は出来高や売買代金が持つ意味合いについて掘り下げていきます。結論的には
- 出来高:単純な注目度や売買の活発具合
- 売買代金:市場の期待感や方向感
がわかるのではないかと考えていて、これを理解するためのキーマンは株価になるでしょう。
よく「出来高が増えれば売買代金も増える」なんて言われますがこれは半分間違いで、正しくは「出来高が増加して株価も上がれば売買代金は増える」です。確かに短期的なスパンで区切ると出来高増加と売買代金増加はニアリーイコールかもしれませんが、やはり理屈としてはこっちで覚えた方が良いでしょうね。
例えば株価1000円の出来高10万株という銘柄があったとします。この場合の売買代金は
- 売買代金=1000円 × 10万株 = 1億円
です。しかしここから1ヶ月後、出来高が20万株まで跳ね上がりましたが株価は半分の500円になってしまいました。このときの売買代金は
- 売買代金=500円 × 20万株 =1億円
と変わりませんよね。この状況は「何かしらの材料によって売買は活発化された(出来高は増えた)が、エネルギーが下方向だった(株価が下がった)ため売買代金は膨れなかった」と言えそうです。
違う例を考えてみます。「株価1000円の出来高10万株」から「株価2000円の出来高20万株」になった場合はどうでしょうか。
- 売買代金=2000円 × 20万株 =4億円
と売買代金が4倍に膨れあがりました。これは株価と出来高の両方が倍になったためで、状況としては「材料によって売買が活発化(出来高が増加)され、そのエネルギーが上方向だった(株価も上がった)ので売買代金も膨れた」というものでしょう。
最後にもうひとつ違う例を考えてみましょう。「株価1000円の出来高10万株」から「株価1000円の出来高20万株」というケースでは
- 売買代金= 1000円 × 20万株 = 2億円
と出来高の増加分だけ売買代金も膨れました。この状況は少し解釈が難しいというかケースバイケースですが、
- 株価が抑えられながら誰かが買っている
- 株価が上がろうとしているところで誰かが売っている
となるかもしれませんね。ざっと例を羅列してみましたが、ここからわかるのは「出来高が増えても株価が連れ高しなければ売買代金は上がっていかない」ということでしょう。また、出来高も増えて株価も上がるというケースはより上の価格で売買が連続しなければ実現しません。
ということは売買代金が日を追うごとに上昇するケースというのは
- 出来高と株価が連続的に上昇している
- 上の価格を買われる何かしらの理由がある
- 市場の期待感が強く値動きが強い可能性あり
ということになります。よくテクニカル分析で株価上昇には出来高が伴わないとダマシの可能性があるなんて言われますが、あれは売買代金の角度から考えても正しいかもしれませんね。
もちろん売買代金が上がっている銘柄の高値圏では上記のような深い押し目も珍しくないので、そういった銘柄ばかり触れば負けないというわけではありません。しかしガチホや塩漬けするのであれば
- 売買代金がしぼむ過程にある銘柄
- 売買代金が全く変わらない銘柄
より良いかなと思います。少し長くなりましたが出来高は単純に売買の活況度を表していて、売買代金は市場の期待感や方向感を表すという意味がおわかりいただけたでしょうか。
売買代金と時価総額
ここまでの話を考えると時価総額が大きい銘柄ほど売買代金も大きそうだなということがわかります。なぜなら発行済み株式数や浮動株数が多いほど出来高も大きくなりやすいからです。小型株と大型株では同じ価格帯でもベースとなる売買代金に差が出てきますし、むしろ株価が低くても日々の出来高水準の差から売買代金が逆転することだってあります。
上記はヤフーファイナンスの売買代金上位銘柄ランキングを一部キャプチャーしたもので、顔ぶれはいつも決まった大型株というのがデフォルトです。じゃぁこの上位勢は市場の期待感が強いのかというとそうではなく、大体いつもこれくらいの売買代金だよねというベース水準からそうそう変わりません。
着目すべきはいつもの売買代金ランキング上位勢に混じって新顔が出てきたケースです。特にトップ勢には入れないまでも、新興市場のくせにそこそこ上位に食い込んできたというケースは大相場の真っ最中という可能性があります。正直、その段階では乗り始め時期として遅いかもしれませんが
- 急騰や大相場に気づくきっかけとなる
- もし息が長い上昇相場であれば間に合うかも
とは言えるかもしれませんね。ちなみに売買代金ランキングは市場で絞り込むことも可能なので新興市場の上位勢だけでも知っておくと役立つとは思います。
資金がどれくらい流入しているかという考え方
ところで売買代金の良い所は単位が円になっているという点です。これはシンプルにどれくらいお金が入ってきているかということを表してくれていて、特に小型株では大事な要素だと考えています。わかりやすく言えば売買代金が普段の何倍にも膨れている最中の銘柄AとBがあったとして、
- 銘柄A:売買代金1億円
- 銘柄B:売買代金1000億円
だったらどちらが大相場になっていそうかということです。売買代金が増加傾向にあるということは利益を得る上でとても良いことではありますが、仮にあなたが短期テンバガ-のような大相場を積極的に狙うのであれば
- 売買代金が大きくなっていて
- なおかつより大きな金額が流入している
という銘柄Bの方がその可能性は高まるでしょうね。売買代金が膨れ上がる中で1000億円を超えてくるような状況は個人も機関投資家も全員参加してくるような状況になりやすく、少なくとも売買代金が数億もないような銘柄では個人同士の殴り合いだと思います。
指数と売買代金
ここまで個別銘柄にフォーカスしたお話をしてきましたが、実は市場や指数にも売買代金というものがあります。例えば・・・
こんな感じで日経新聞では東証一部・二部・JASDAQに分けて売買代金が日々公表されているわけです。よくSNSでも大引け後に情報を流してくれている方がいますが、売買代金の性質から考えても推移を追うことは大切ですね。
日経平均株価の売買代金をヒストリカルデータやグラフで提供してくれているサイトもあり、そういったものを活用して推移を追ったときに「増加傾向にある」と感じた際は市場センチメントが好転している可能性も考えられそうです。逆に日経平均株価が不調で売買代金も下がってきているという時期は市場センチメントが悪化している可能性を考えられそうです。
まとめ
今回は売買代金と出来高の違いに加え、売買代金でどういったことがわかるのかを述べました。
単に出来高が上昇するだけでは長いスパンで売買代金に影響はありませんが、その動きに株価もついてきてくれると売買代金も上昇しやすいですね。株価が上がるためには上の価格で売買されていかないといけませんので背景に期待感も求められるでしょう。
また、特に小型株では売買代金そのものの大きさが相場の大きさを考える上で重要となりやすく、過去に大相場を張った銘柄の傾向を探るのは効果的だと思います。その水準をベースにランキングをチェックしつつ、普段の顔ぶれを知るとなお良いでしょう。
売買代金は個別銘柄だけでなく市場や指数にフォーカスした考え方もあり、地合いや市場センチメントを測る上で役立ちます。投資家が活発に売買をすればそれだけ市場の売買代金も増加するので忘れずに追っていきたいですね。
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